農業土木コンサルタントとは

What is an agricultural civil engineering consultant?

Overview

概要

職業としての農業土木コンサルタントは、主に官公庁が発注する「農業を営む際に必要な諸施設」を構築するための「技術業務(=調査・測量・設計など)」を受注し、土木の専門知識を活用しながら、調査・企画・立案もしくは助言(コンサルティング)等のサービスを提供する専門技術者を指します。

開水路形式の用水路と転換畑ほ場

用水路パイプラインの空気弁室ステッキと水田ほ場

HISTORY

農業土木コンサルタントの歴史

第二次世界大戦前における農業土木をはじめとする社会資本の整備は、「計画、調査、測量、設計」といった一連の業務を、主に官公庁に所属する技術者が一体的かつ直接的に実施してきました。しかし、戦後においては、戦災復興とそれに続く高度経済成長により、社会資本整備の要求と事業量が急速に拡大したため、一連の業務のうち計画を除いたものについて、民間の技術力を活用する流れが進展し、ここに農業土木コンサルタント業を含む建設コンサルタント業が生まれました。

農業土木コンサルタントの特徴

一般土木の建設コンサルタントでは、道路や橋の建設など、不特定多数の住民を対象とした事業に関わることが多いのですが、私たち農業土木コンサルタントは、特定の農家の皆さんを対象とした事業となります。このため、農家の皆さんがそれら事業へ参加する場合には、事業による恩恵を受ける代価として、一定割合の金銭的負担を担うことになります。従って、我々農業土木コンサルタントは、事業の発注者(国や地方自治体など)だけでなく、農家の皆さんや、彼らにより設立された土地改良区などの関係機関と綿密な協議を行いながら、業務を遂行してゆくことになります。

現地で発注者との合同踏査

農家さんへの意向確認

我が国と北海道の農業および農業土木コンサルタントの展望

春の田植え風景(上川地方)

現在、我が国の農業における現状は、「農業就業人口の減少」、「就業者の高齢化」、「耕作放棄地の拡大」、「農業所得の減少」など、非常に厳しい環境下にあります。そして、これらの要因に加え、「食生活の変化」(米消費量の減少と肉類油脂類消費量の増大)などの影響を受けた結果、我が国の食料自給率は、主要先進国で最低水準(供給熱量ベースで37%~図-1)にとどまってます。

一方で、北海道における食料自給率は、196%(2018年現在)で47都道府県中の最高水準にあり(表-1)、国内における食料生産基地の役割を担っています。また、都府県農業と比べた北海道農業は、販売農家1戸あたりの経営規模(23.8ha)が都府県農業のそれ(1.6ha)を大きく上回っており、年々その規模を拡大させています(図-2)。また、農業所得を主(所得の50%以上が農業所得)とする主業農家が多く(全体の70%強~図-3)専業化が進展しており、加えて農業就業人口の平均年齢も都府県と比べれば若い水準にあります。

そこで、農林水産省は、我が国の農業を取り巻くこれら厳しい環境を打開し、農業の再生を図るため、「食料農業農村基本計画」を策定し、農政の基本指針を定めています。令和2(2020)年3月に策定された基本計画では、令和12(2030)年度の食料自給率を、供給熱量ベースで45%(生産額ベースで75%)に引き上げることを目標に掲げました。また、人口減少、農業従事者の高齢化、農地面積の減少等が進むなかで、食料自給率を向上させるためには、国内生産基盤の強化等により農業を持続可能なものとすることが必要です。そのために担い手の育成・確保を進めるとともに、担い手への農地の集積・集約化、農地の大区画化・汎用化、スマート農業の導入等を推進しています。

これらの状況を踏まえると、我が国の農業における北海道の重要性は、今後ますます大きくなるものと考えられます。従って、農業基盤整備事業等を通じ食料自給率の向上に貢献する農業土木コンサルタントの担う役割は、非常に大きいと言えます。

※添付図表は、すべて「農林水産省 統計資料」より引用

都道府県別食料自給率(平成30年)

表-1:都道府県別食料自給率(平成30年)

各国の食料自給率(平成30年)

図-1:各国の食料自給率(平成30年)

販売農家1戸当たりの経営耕地面積推移

図-2:販売農家1戸当たりの経営耕地面積推移

全販売農家に占める主業農家の割合(令和3年)

図-3:全販売農家に占める主業農家の割合(令和3年)