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BUSINESS

肥培かんがい

肥培(ひばい)かんがいとは、牛などの家畜ふん尿にかんがい用水を希釈して発酵させたスラリーを、農地に還元するものです。成牛は、1日あたり20~30kgの牛乳を生産しますが、併せて約60kg程度のふん尿を排出しており、これらふん尿の適切な処理が、生産者にとって経営規模拡大の足枷となっています。

このため、「国営環境保全型かんがい排水事業」では、牛などの家畜ふん尿を適正に処理する「肥培かんがい施設」の整備をはじめ、肥培かんがい施設に給水する「用水路」の整備、浄化機能を有する「排水施設」の整備を行っています。

写真-1
配水調整槽

写真-2
流水口調整槽

写真-3
牛舎の様子

肥培かんがい施設

(好気性発酵処理方式の場合)

肥培かんがい施設は、牛などの家畜ふん尿を適正に処理する施設です。ふん尿は、そのままでは性状が悪く、また運搬が困難であり、牧草地などの農耕地に散布すると、過度の臭気が発生したり、場合によっては作物に生育障害をもたらします。また、近傍排水路への流出による河川湖沼の水質悪化や富栄養化が指摘されています。

肥培かんがい施設では図-1に示すとおり、畜舎等で発生する家畜ふん尿を「流入口」施設に投入したうえで用水を加水希釈し、専用機械での攪拌を経て均質なスラリーとします。スラリーは、次に「調整槽」施設に運ばれ、専用機械により強制的に空気を混入させることで好気性発酵を促し、腐熟化させます。土壌に浸透しやすくなった腐熟化スラリーは、有機質肥料としてタンカー等により牧草地に散布します。但し、冬季積雪期には散布できませんので、その期間発生する腐熟化スラリーを貯留する「配水調整槽」施設も設置されます。

なお、上記処理方式は「好気性発酵」処理方式に基づく例ですが、この他に「嫌気性発酵」処理方式などがあります。

肥培かんがい施設概念図

図-1
肥培かんがい施設概念図

事業の効用

肥培かんがい施設の整備により、以下の効用が発現されます。

農業効果

  • 牧草の生産量が増加します

  • 牧草地における化学肥料の使用量と購入費が抑制されます

  • 糞尿の適正な農地への還元により、環境循環型農業を実現します

  • 糞尿処理に要していた作業量が短縮されます

環境効果

  • 河川湖沼に流出していた汚濁水が減少し、水質が改善されます

  • 腐熟化されたスラリーは臭気が弱まるので、においが軽減されます

  • 畜舎付近が整理され、農村環境および農村景観が向上します

肥培かんがい施設の設計例

当社では平成18年度以降、道内の国営地区における肥培かんがい施設の設計業務を数多く受注しています。肥培かんがい施設は、複数の受益農家による共同利用としていますが、戸別の受益農家における営農方針や営農展望を踏まえ、将来的な営農計画に配慮した施設規模や配置とすることが求められます。従って、受益農家の皆さんとの綿密な調整が、よりよい設計成果とするための鍵となります。

業務では、先ず受益農家の皆さんとの打合せを通じ、施設配置の希望を聞き取り、配置スペースや水理的な制約条件から、その妥当性を判断したうえで、平面測量および現地調査、地質調査を行います。そして、詳細な施設規模や施設配置、機器選定などについて、発注者および受益農家の皆さんを交えた打合せを重ね、設計を進めて行きます。

なお、配水調整槽をはじめとする各施設は、非常に規模が大きく重構造物であるため、地質調査の結果によっては、基礎対策工法の検討を要することが想定されます。また、安定した基礎地盤を求めて、候補地が二転三転することもありますので、迅速な対応が求められます。

設計図面は、施設の配置を示す「一般平面図」(図-2)をはじめ、各施設の「構造図」「配筋図」「配管図」「電気設備図」「システムフロー図」(図-3)など、1件の肥培かんがい施設で70枚程度作成します。そして、設計図面をもとに工事数量、概算工事費を算出し、業務報告書(設計・測量)を取りまとめ発注者に納品しました。そして、この設計図を基に、令和2年度に工事が行われました。

設計図面「計画平面図」

図-2
設計図面「計画平面図」

設計図面「システムフロー図」

図-3
設計図面「システムフロー図」